2025年4月17日、AWE春の特別企画として、臨床心理士・医学博士の吉里恒昭先生をお迎えし、オンラインセミナー「ウェルビーイングとポリヴェーガル理論 〜カラダさんとの対話を通して〜」を開催しました。
リアル参加者とアーカイブ参加者を合わせて、全国から55名の方にお申し込みいただきました。
AWEでは、過去のイベントでポリヴェーガル理論を扱ったことがありますが、そのときからさらにご興味をお持ちいただいている方が増えている印象でした。
ポリヴェーガル理論から見る「心・身体・社会」のつながり
AWEでは、ウェルビーイングを「心・身体・社会がよく機能している状態」として捉えています。
今回のセミナーでは、ポリヴェーガル理論という視点を通して、この三つの側面がどのように影響し合っているかを、実感をもって学ぶことができました。
ポリヴェーガル理論は、自律神経の働きを「交感神経」と「副交感神経(腹側・背側)」に分け、心身の反応をより深く理解できる理論です。
吉里先生はこの理論における自律神経の働きを「赤(戦う・逃げる):交感神経」「青(凍りつく・シャットダウン):背側迷走神経」「緑(安心・つながり):腹側迷走神経」の3色に色分けした“ポリ語”で表現し、自分や他者の状態をやさしく客観視する方法を教えてくださいました。
赤・青・緑は、身体だけでなく心の状態とも関連しており、心と身体の状態は、社会活動にも影響をもたらします。
理論の専門的な解説にとどまらず、「この理論を、実際の臨床でどのように活かしてきたか」という実践の知恵を、温かくユーモアを交えて話してくださり、ウェルビーイングという視点で理解を深める構成をしてくださった吉里先生に感謝いたします。
緑の時間に気づく 〜参加者の声より〜
講座の後半では、「あなたにとって“緑”を感じる瞬間は?」という問いかけに、多くの方が応じてくださいました。
「緑になろう」とがんばるのではなく、「すでに緑だった時間」に気づくことの大切さを、参加者一人ひとりが思い出していく、あたたかな時間となりました。
- 神社仏閣に行くと緑になる
- 空や遠くの山をぼーっと眺める
- 愛犬をハグしまくることが私の緑
- 一人でカフェでコーヒーを飲みながら、新聞を読んで緑になって、仕事に向かう
- 体が喜ぶ食事と、どんな自分も受けとめてくれる人との関わり
- 季節の変わり目をカラダで感じた時
- 推しの動画を見る、赤ちゃんを抱っこする
- 温泉や散歩、アロマ、木を磨く、音楽を聴く、ぬいぐるみを抱っこする…
また、吉里先生は、「安心して赤になり、安心して青になる。その自分を緑で受けとめることができれば大丈夫」と語ってくださいました。
この言葉に、多くの方が深くうなずき、自分にやさしくなれる視点を受け取っておられました。
セミナー後には、以下のような感想も寄せられました(すべて原文のまま掲載):
- 身体さん、心さん、と呼ぶだけで緑になることを実感しました。ありがとうございます。
- 赤や青も悪くなくて、どちらにしても緑に戻れることが大切。そして体からの信号に敏感でありたいと思いました。
- 哺乳類は穏やかなブレーキを他者と協働でつくって進化してきた、というお話に感動しました。
- やりたいのにできない、やりたくないのにやってしまう。そういう自分だからと思いがちになる所を「私の神経がそうなっている」と思うだけで、過剰に自分を責めずに済みます。
- 支援する側が緑でいることの大切さを学びました。
- 自分の身体がよく働いてくれているのを感じ、労っていきたいと思います。学校で子どもたちと関わるときにも緑で在りたいですし、日頃から自分の緑を感じていきたいです。
「ポリヴェーガル理論を、カラダさんとの対話を通じて自分のものにしていく」──このセミナーは、そんな新しい視点と優しい実践を得られる貴重な機会でした。
改めて、吉里恒昭先生、そしてご参加くださった皆さまに心より感謝申し上げます。