AWE認定心理教育ナビゲーターの広瀬竜太です。
現在,私は山梨県の公立中学校の教諭として学校現場で働いています。
「自らの幸せを自ら創り出す人を増やしていきたい」
AWEの活動理念に共感した私は,2020年にナビゲーターの資格を取得しました。
それからは,自分や家族のウェルビーイング向上と目の前の子どもたちに,講座を通して学んだウェルビーイングの知識やスキルといった『しあわせレシピ』(引用 『こころを整えるしあわせレシピ』(いのちのことば社))を学級,授業,部活動の場で伝えてきました。
私は勤務している地区(2つの市を含む)にある「東山梨教育協議会」という先生方の研究組織の研究推進委員長を仰せつかっています。
(今年度の会員数は校長・教頭の管理職も含めて447名)
このたび,2021年8月10日に毎年夏休みに行われる行事「教育講演会」において,AWE共同代表理事である渡邊奈都子さんに「幸せ研究とウェルビーイング教育の可能性」という演題でご講演いただきました。
「教育現場にウェルビーイングのあり方・考え方・やり方を広げたい!」と考えていた私にとっては大きなチャンスでした。
教員にはそれぞれの理念や創り上げてきた文化がある思っています。各々がそれら大切にしているため,新しいことにチャレンジしていくというのは少なからず勇気が必要であると個人的に考えています。
しかし,もし,今よりも教育効果のある有益な情報であれば多くの仲間に伝えたい。
それを取り入れるか入れないかは本人の選択である。
少しでも誰かの力となり,それが目の前の子どもたち,その家族に還元されるのであれば!と願い、本講演会を企画しました。
本来であればホールに参集しての講演会であったり、会員以外に教育事務所,教育委員会,教職員退職OBや保護者も参加できたりするのですが、感染症流行の影響によりそれが叶わずリモートでの講演会となりました。
しかし,たいへん好評を得た講演会となりました。
以下に、概要と感想をご報告いたします。
本講演会では「ウェルビーイング」を知ることを土台にしつつ、ウェルビーイング教育の世界での広がりや効果とともに、私たちが今日からできるウェルビーイングを高める実践方法にまで触れていただきました。
会員に対する事前アンケートの結果では,今回はじめて「ウェルビーイング」というワードを耳にした人が半数を超えていました。そう考えると,非常に良い機会になったと思っています。
その中でも特に,海外(ブータン,メキシコ,ペルー)における政府レベルで取り組まれた最先端の「ウェルビーイング教育」について知ることができたことは,私たち教職員にとって大きな出来事でした。
日本では,まだ個人でウェルビーイング教育に取り組んでいる先生がいるだけではないでしょうか。学校や地域,県,ましてや国をあげて取り組んでいることを耳にしてはいません。
その取り組みの内容,方法,教育効果に会員からは驚きの声が届いていました。会員の新しい試みに背を押してくれる話題でした。
講演の中で奈都子さんから何度も伝えられたワードは「まずは先生方からです。先生方のウェルビーイング向上が先です」というものでした。
私たち教職員はすぐに「子どものために,子どもたちに」と行動します。
目の前の大切な子どもたちのことを考えてまず行うことは「子どもたちに何かしてあげる」ではなく、「私たち教職員が自身のウェルビーイングを高めていく」ことからスタートできるのだと改めて考えました。
そして私も企画者・参加者として講演を聴く中で「ウェルビーイング教育をますます多くの人に伝えたい!」と強く感じました。
参加者の感想(一部)
・私たち教師は「目の前の子どもたちの笑顔のために」という使命感で教育に関わってきました。近年の多忙な学校現場で何だか仕事にやりがいを感じられなくなってきたり,苦しくなっていたりしていました。しかし,本日の講演をお聞きし,子どもたちのことを考えるのも大切ですが,まずは「自分自身が幸せである」ことが重要だと気がつきました。仕事へのエンゲージメントも。それが土台にあってこそ,目の前の子どもたちの笑顔を増やしていけるのだと思います。私たちの働き方,考え方を変えるきっかけになったと思います。まずは自分自身と東山梨の教職員のウェルビーイング向上からが必要だと思います。ありがとうございました。
・ご講演ありがとうございました。「幸せ」についてじっくり考えたことなかったなとあらためて感じました。幸せは運命でもなく,誰かが与えてくれるのではなく,今日から自分の幸せのためにできることがあることを知ること。人の強みに注目することができると関係性が変わり,しなやかマインドセットで互いに忍耐力を強め,それが成績向上にもつながっていくこと。そんな幸せ感を感じられる子どもたちを育てていくためには,まず教師自身が「幸せ」を感じること。今日から何を実行していったらよいのかも具体的に教えていただきました。現状に不満ばかり感じたり,ついつい人のせいにしてしまったりの毎日を抜け出し,プラスの状況の維持向上を目指していきたいなと思いました。
・ウェルビーイング教育的なことはある程度行ってきたかもしれない。それぞれのライフスキルを心の教育として扱ってはいたと思うが,意図的に体系的・計画的な取り組みを組織的に行うには,小小連携・小中連携といったことが必要な気がします。 また,働き方改革を進める上でもウエルビーイングの考え方を大切にしていきたいと思います。 まずは,自分自身が取り組み,幸福度をより高めていきます。
・非認知能力を高める重要性を示唆する研究結果だと感じました。最も学校にも適用されそうだと感じたのは,上司の注目とエンゲージメントのデータです。上司を教師に,部下を子どもに入れ替えれば,そのまま学級のことに当てはまるのではないでしょうか。 ブータンやペルーでの比較実験は,現在の日本ではできなさそうで驚きましたが,例えばQU検査も子供の自己有用感や幸福度を測るものではないかと感じました。学級という範囲内でのウェルビーイングは,やや限定的な気もしますが,今までマイナスを拾い上げる努力をしてきたものを,プラス,強みをもっと取り上げる努力に変えていく必要もありそうに思いました。
・ウェルビーイング教育を自分自身の教育実践に取り入れるためには,まず自分自身のウェルビーイングを高める必要があると思いました。これから毎日寝る前にthree good thingsを挙げてみたいと思います。それによって,生徒のよいところや強みをたくさん見つけて,積極的にフィードバックしていきたいです。私自身,ダメ出しばかりを受けて成長してきたと感じています。全く自信につながらないですし,自分の強みを認識することにつながらないと思います。どうしても一つの固定化された教育文化的に「よい」と思われる生徒を認めている現状があると思います。そうではなく,多様な価値観を受け入れ,生徒個々が長所や強みを認識し,自信を持って伸びていける現場を作っていきたいです。
感想からも分かるように、大好評の企画となりました。今まさに、ウェルビーイングが教育現場でも求められています。来年度も拝聴したいとの声もありました。
学校現場は,その規模によっては多くの人と関わることになります。同僚はもちろんのこと,目の前の子ども,その兄弟,保護者,地域,校務分掌などによる外部関係者…。
そう考えると、私が学び,認定ナビゲーターの資格を取得したことは必然だったのかもしれません。
何よりも,これから変化の激しい社会を生きていく若き仲間の子どもたちに,「自らの幸せを自ら増やす人・創り出す人」となるための知識やスキルを伝えていくことは、本当に価値あることだと信じています。
これからも多くの人に「しあわせレシピ」が伝わっていくよう,認定ナビゲーターとして今できる活動を行っていきます。
子ども,教職員,保護者,地域…「みんなが幸せな学校」になっていくことを切に願い、ご報告とさせていただきます。
報告者:広瀬竜太