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東京成徳大学石村郁夫准教授による「コンパッション・フォーカスト・セラピー・ベイシック」実施

この度AWEでは、東京成徳大学応用心理学部臨床心理学科の石村郁夫准教授を講師にお迎えして、「コンパッション・フォーカスト・セラピー・ベイシックコース」を開催いたしました。

開催期間は、2020年1月11日〜3月14日の8日間(全16時間)。

オンラインの受講形態で、コンパッション・フォーカスト・セラピーに関する理論を学び、セルフコンパッションに関するエクササイズを行い、ホームワークを通じて実体験を分かち合うなど、インタラクティブな構成で実践的な内容でした。

 

 

近年、心理・医療・産業・教育など幅広い分野でマインドフルネスが注目されていますが、それと同時にセルフコンパッションという概念の重要性も取り上げられるようになってきています。

セルフ・コンパッションという言葉をはじめて聞く方もおられるかもしれません。セルフ・コンパッションとは、「自分への慈しみ」「自分への思いやり」というような意味の言葉ですが、本質的にはもう少し深い概念と考えられています。今回講座を担当してくださった石村郁夫准教授は、セルフコンパッションを「自己の感情や思考を受け容れ、他者との共通性を認識するという考え方」(2019)と説明しています。

セルフコンパッションの研究者である、テキサス大学教育心理学部のクリスティーン・ネフ博士は、セルフ・コンパッションの主な構成要素として、「自分への優しさ」、「共通の人間性の認識」、「マインドフルネス」の3つを挙げており、セルフ・コンパッションは人生における感情的なウェルビーイングと満足感を獲得する上で非常に有効な方法であることが科学的に証明されていると述べています。

 

 

こうしたセルフコンパッションを養い育むためのトレーニング・プログラム、それがコンパッション・フォーカスト・セラピーです。コンパッション・フォーカスト・セラピーは、イギリスの行動・認知療法学会の元学会長のポール・ギルバート博士によって開発された心理療法です。

今回行われた講座の特徴は、以下のように日常生活の中でより積極的にコンパッションを育み、実践するためにデザインされたプログラムとなっています。

 

Week 1 / 1月11日(土)10:00~12:00
コンパッションとは?インテンション・セッティング、コンパッションレベルチェック、呼吸法

Week 2 / 1月25日(土)10:00~12:00
自己批判の役割とは?古い脳と新しい脳、感情制御の三つのモデル、コンパッショネイト・カラー

Week 3 / 2月1日(土)10:00~12:00
スージング・システムを活性化させるためのスイッチ、安全な場所にいるイメージ

Week 4 / 2月8日(土)10:00~12:00
コンパッションに満ちた自分のイメージ、慈悲深い他者からの言葉かけ

Week 5 / 2月22日(土)10:00~12:00
コンパッションの恐れチェック、セルフ・コンパッションを妨げる要因の探索

Week 6 / 2月29日(土)10:00~12:00
慈悲の代替思考とケースフォーミュレーション

Week 7 / 3月7日(土)10:00~12:00
コンパッショネイト・レター・ライティング

Week 8 / 3月14日(土)10:00~12:00
コンパッショネイト・アクション

 

講座を受講した感想ですが、エクササイズでの体験を主軸としながら、それを補完する理論の解説がありました。このように進むことで“感じること”と“考えること”のバランスが程よくとれていたように感じました。また、講座と講座の間にはホームワークがあり、その課題を行うことでセルフコンパッションな考え方が理解できるようになりました。毎回、エクササイズを繰り返し行うことで、コンパッションなあり方についても体感することができました。

今回は週末の開催となりましたが、土曜日の朝にコンパッションについて学び、エクササイズを交えた分かち合いを行うことで、1週間の疲れが癒されて軽くなる感覚があり、充実した休日を迎えることができました。ご参加くださった皆さんと、講義を担当くださった石村先生に心から感謝いたします。

 

〈参考文献〉
石村郁夫 著.(2019)『ストレスに動じない“最強の心"が手に入る セルフ・コンパッション』大和出版
クリスティーン・ネフ 著.石村郁夫,樫村正美 翻訳(2014)『セルフ・コンパッション―あるがままの自分を受け入れる』金剛出版

 

記事:渡邊 義

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