感情は伝染することが知られています。
では、あなたが幸せになると、あなたの何人先の人まで幸せになるのかと考えたことがありますか?
ソーシャルネットワークの研究で有名な、ハーバード大学医学部のNichlas Christakis 氏(現イエール大学)とカリフォルニア州立大学サンディエゴ校のJames Fowler 氏の研究では、5000人近い人たちを1983年から2003年までの20年間追跡しました。
当事者や、その友人、子供、そして孫までを追跡した、かなり貴重な縦断研究です。
研究者らは、その結果、参加者の幸福度と繋がりをネットワークの図で表しました。
幸せな人を黄色、幸せでない人を青、その中間の人を緑で表し、1996年と2000年のものはこちらです。
(Source: Dynamic spread of happiness in a large social network: longitudinal analysis over 20 years in the Framingham Heart Study,BMJ 2008;337:a2338)
幸せな人は幸せな人同士でつながっている傾向があり、その年ごとの図を見ると、一見、「類が友を呼ぶ」と言われるように、すでに幸せな人たちが仲良くなっているように見えます。
でも実は、時間の経過による変化を追跡すると、黄色に囲まれている人たちが少しずつ青から黄色に変わっていくのだそうです。
ある時点で幸せな人に囲まれている幸せでない人は、将来幸せになる傾向があり「幸せが伝染する」ことがわかりました。
これは、同じ時期に一度データをとるだけの横断研究ではわからないことです。
そして、一人の幸せは3度の隔たり(友達の友達の友達)まで伝染(影響)し、4人目になると影響がなくなるというデータも出ています。
それを表したのがこのグラフです。
横軸は、左から、ある人(A さん)の友達(1)の友達(2)の友達(3)の友達(4)になります。
縦軸は、Aさんが幸せになると、(1)〜(4)の人たちが幸せである確率がどのくらい上昇するかを表しています。
James Fowler氏は、(あなたが顔も知らない)「あなたの友達の友達の友達が幸せになることは、あなたが5000ドル(約50万円)を手に入れるよりあなた自身の幸せに影響が大きい」と言っているそうです。
考えてみてください。
あなたの幸せは、あなたの友達の友達の友達までしか伝染しないけれど、あなたが幸せになったことで幸せになった一人目の友達の幸せは、その友達の友達の友達(あなたから見ると4人目)まで伝染するのですから、永遠な連鎖が起こるわけです。
そして、あなたの幸せは距離が近い人に伝染します。
あなたが「幸せでない」から「幸せ」にスイッチすると、1マイル(約1.6キロ)以内に住んでいる友達が「幸せ」である確率はなんと25%上昇し、お互いがいい友達だと思っている特に仲のいい友達の場合は63%も上昇します。
そして、あなたの隣に住んでいる人なら34%、1マイル以内に住んでいる兄弟なら14%、同居のパートナーなら8%上昇するということです。
(思ったよりパートナーが低いですが、これは、肥満や喫煙の研究でもでているように、伝染は同性の間でより起こる傾向があるようです。)
逆に、自分を犠牲にして人を幸せにしようと思っても、自分自身の幸福度が上がらないとあまり効果はないでしょう。
一人一人がウェルビーイングな状態を育てる方法を学び、自分で自分の幸せを増やすことができるようになると、あなたの周りの人たちへ幸せが伝染し、そしてその余波は世界中に広がっていくのです。
自分自身が幸せになることは、いま目の前にいる人の幸せに貢献できることです。
科学的に調査されている再現性の高い「幸せになる科学的な方法」を、毎日の生活に取り入れやすく伝えること、それによって、ウェルビーイングに生きる人たちが増え、さらに周りの人たちに伝わっていくこと。
そんなつながりを支援することがAWEの役割だと考えています。
<参考になるリンク>
ハーバード大学医学部ニュース"The Contagion of Happiness”(幸せの伝染)の記事
https://hms.harvard.edu/news/harvard-medicine/contagion-happiness
実際の研究論文
http://www.bmj.com/content/337/bmj.a2338.full
連鎖の図
http://www.cnn.com/2008/HEALTH/12/05/happiness.social.network/index.html?eref=rss_us
Christakis氏のソーシャルネットワークの研究のTEDトーク
https://www.ted.com/talks/nicholas_christakis_the_hidden_influence_of_social_networks#t-4425